[12]母から受け継いだもの

母は頑張り屋だったが、それは母にとって普通のことだった。

常に動いていて、ジッとしていることができない。

私のジッとしていることができない性格はこの人から受け継いでいたと思う。

 

そして誰とでもすぐ仲良くなれる社交家でもあった。それは老若男女を問わず。

私も誰とでもすぐ仲良くなれるので、そういうところは母の血かなと思う。

 

でも、それだけと信じる。

好きになっちゃいけない人だとわかればシャッターを下ろすことができる。

何より、不本意な結婚など絶対しないと決めている。

 

 

 

 

不本意な結婚。

母には、根本にそれがあったのかもしれない。

楽しみなことが一つもない。

財布は舅が握っている。やりがいもない。

褒めてくれる人もいない。

父には長男ゆえに結ばれることのない想い人がいたらしい。なので、心は母の方を向くことは無かった。

 

唯一、癒されるはずのわが子も姑に取られたという。

そういえば、いくら記憶を辿っても祖父母に育てられたという思い出しかない。

幼い頃は、テレビの相撲を観てた祖父の膝の中で遊び、

お風呂は祖母と一緒に入り、夜は中学になって自室を与えられるまで、祖母のお布団で毎日一緒に寝てた。

そういった生活が当たり前で日常になっていた。

 

 

そんな中で、少しでも優しさに触れることが有れば…と思ったりする。

 

 

 

高校生の頃、あれ⁈母の言動が変だなと思うことが何度かあった。

でも、大人の世界に首を突っ込んでいけないという空気があり、気にしないことにしていた。

 

 

一つ気になっていることがある。

 

母方の祖父が亡くなる前、その祖父はボケたと聞いた。

 

祖母が他の男と関係を持ったと殴りかかったのである。

おじいさん、おばあさんと言われて当たり前の年齢の頃だ。

誰もが、そんなことはありえない。祖父はボケたと言って疑わなかった。

 

 

 

もし、祖父の言っていたことが本当だったとしたら。

今回の母の騒動を思ったら、無い事ではないかもしれない…と思い始めている。

だとしたら、あまりにも祖父が不憫でならない。