エピジェネティクス

【追記…】

新聞を開いて、まずお悔やみ欄を見るのが習慣になってしまった。 甥っ子の結婚式の招待状が届いた。 やんちゃ坊主の記憶しかないあの子が所帯を持つ。 時の流れを感じるが、こんな嬉しいことはない。 だけど、いきなり車椅子姿の私を見せるわけにはいかない…

[14]可愛いおばあちゃんになる

初めの二週間はしんどかった。 入れ替わりで看護師さんが部屋にやってくるけど、みな同じ人に見える。 4日目からリハビリが始まったが、慣れているはずの歩行器で、上手く歩けない。 今は、安静に…では無く、寝たままだと筋肉が衰えるので、できるだけ動くよ…

[13]スパゲッティの悲劇

車椅子生活になった現在、一昔前とガラッと世の中が変わり、ずいぶん暮らしやすくなった。 便利な家電やグッズ、外に出ればバリアフリーの施設が圧倒的に多く、車椅子の私を見れば周りの皆んなが優しく接してくれる。 夫の理解も大きいと思う。 1番ありがた…

[12]母から受け継いだもの

母は頑張り屋だったが、それは母にとって普通のことだった。 常に動いていて、ジッとしていることができない。 私のジッとしていることができない性格はこの人から受け継いでいたと思う。 そして誰とでもすぐ仲良くなれる社交家でもあった。それは老若男女を…

[11]わたしの思うこと

年下の男より、身体の弱い父に代わって永い間この家に頻繁に出入りしてた父の姉の旦那様とできてたことの方が問題になった。 伯母さん夫婦は地域や学校の役員をやっていたり、いろんな世話役を買って出ていて信頼を得ていた。 おじさんに至っては、町内の行…

[10]妹からのメール

妹の旦那は、思いのほか亭主関白だった。 妹は甘えん坊のところもあり、旦那様に頼りきっていたし、稲作のわからない事は、旦那様が母やおじさんから伝授してもらっていた。 地域の奉仕活動にもよく参加し、とにかく真面目で近所からの信頼も厚く、 気がつけ…

[9]父から受け継いだもの

40代半ば頃、異変に気づいた。 手すりの無い階段を降りることができない。 他に問題はないので特に気にしないでいた。 しばらくして、早足で歩くことに違和感を覚え、立ち上がりに人の手を借りるようになり、念の為に軽い気持ちで通勤途中の病院へ立ち寄った…

[7]電話

一家に一台の固定電話しかなかった頃、 うちの電話は納屋で農作業してても着信音がわかるよう、居室と納屋の中間にあたる炊事場に置いてあった。 その夜、私は2年前に卒業した高校の友達からの電話がかかってくるのを、電話の前で待っていた。 時間を決めて…

[6]結婚なんかしないと誓った日

それは22歳の時だった。 海で出会った彼と恋愛真っ只中だった。 寝ても覚めても彼のことばかり考え、仕事で嫌なことがあっても、忙しくて大変でも彼を想うことで頑張れた。 しかし彼は、尊敬する父親の事業を引き継ぎ軌道に乗っていた。 私の親の求める人と…

[5]妹の思い

何も話さなくなった私に業を煮やした母や親戚たちは、妹に方向転換した。 偶然にも、妹とお付き合いしていた男性は、長男でも無く、農業にも拒みも無く、むしろ同じような農家育ちで稲作に馴染みがあったようだ。そして機械いじりが得意という。 しかし、そ…

[4]秘密主義

男子が生まれなかったわが家。 長女として生まれたわたしは、婿養子をもらい家を継ぐ、家名を残すというのが私の役目だった。 おばあちゃん子だった私は、祖母と離れて暮らすことなど全く考えられず、ずっとこの家にいるものと思っていた。その後の影響など…

[3]父の宿命、母の宿命

長男として生まれた父は、やはり家を継ぐ立場にあった。生まれつき身体が弱く、年頃になってもなかなか縁談は無かった。 そこで白羽の矢が立ったのが、祖母の姉の娘である私の母。いとこにあたる。歳合いもちょうどよい。 母にとって、いとこである父の家の…

[1]青天の霹靂

エッ⁈どういうこと? わけわからない。 携帯電話のスクロールボタンで何度も読み返す。 少しだけ分かる部分もある。 だけど、ここ何年も会っていないせいもあって、近況がわからない。 汗で滑って、震えてスクロールボタンがいう事をきかない。 昨日夫が仕事…