[4]秘密主義

男子が生まれなかったわが家。

長女として生まれたわたしは、婿養子をもらい家を継ぐ、家名を残すというのが私の役目だった。

おばあちゃん子だった私は、祖母と離れて暮らすことなど全く考えられず、ずっとこの家にいるものと思っていた。その後の影響など知る由も無く。

 

 

年頃になった頃、

ちょっとでも男の人とお出かけしようものなら、私の知らないところで相手方の身辺調査が始まっていた。

 

長男ではないか、どこに住んでいるのか、職業、サラリーマンなら転勤族ではないか、宗教、差別にあたいする人が親族にいないか。

当時は「問い聞き」といい、親類の伯父・伯母たちで行われていた。

プロではないので相手方にもすぐわかる。

 

あとでそれを知り、私もショックだったが、相手のプライドをどれだけ傷付けただろうか。豊かで華やいだ時代は、とっくの昔に終わっていて、自分たちは今どの位置・立場にいるか分かってないことに腹が立った。
知り合ったばかりで、結婚の「け」の字も出ていない。私自身が相手のことを何も知らないのに。

 

それを知ってから、事務的なこと以外一切家族に喋らなくなった。

秘密主義と言われた私のはじまり。

 

家名を残すためだけに一緒になった会話の無い両親のようになりたく無い!という思いから、婿養子を貰って名を残す…という結婚はしたくない!という気持ちも大きかった。

 

祖母だけは、そんな私の気持ちを察して静かに見守ってくれた。